ブログ「社長のつぶやき」

2022.07.05 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

秋冬作本番:予想がつかない作付け動向

今年も7月がやってきた。会社にとっても7月・8月は暦通りHOTシーズン。最繁忙期、またそうなってくれないと困ります。

ところが農家にとっては原材料費である肥料や石油、金属関連資材の暴騰、秋冬にかけて更に値上りしそうな情勢下、作付けをどうすべきか、途方に暮れている。
社内の報告を読むと5h規模でキャベツを栽培する農家は1h減らして様子を見る、施設トマト農家は購入苗から自前の苗に切り替える、しかも7月定植し、年内の相場に期待し、重油価格の動向によっては冬越し再検討との声が聞こえてきます。
高齢化した農家では離農のきっかけになっている。
多くはコストをかけて勝負に出るというよりも、コストを抑えて被害を最小限にしたいという方向に向かっている感じです。
商売する側の我々にはありがたくない話ですが、農家の気持はよく分かる。
仕入は暴騰しているのに、将来の販売価格が見えないからです。

TVの情報バラエティー番組を見ていたら、突然の猛暑が夏野菜にも影響、価格が高騰と伝えていました。3本入っていた胡瓜が2本になった(本当か?私が知るかぎり今年の胡瓜は安値安定と思うが)。 
食料品価格の値上りが続く中、給与所得が上がらない家計のやりくりが大変と伝えたいようです。

それはそうですね、しかし仕入れ価格の値上りが続く中、この猛暑に出荷している農家はもっと大変ですよ、そもそも野菜の値が高くなるのは需要が旺盛だからではなく、天候不順で思うように収穫できないからです。農家のイライラのほうが重大です。

尊敬する著名なコンサルタントが毎年数冊の本を出している。
ある会員が「先生読むのが大変です」と言ったところ、その先生は「私は書いているのですよ」と答えたそうです。農家も「書いている」側です。
もう少しメディアも生産者側の声や現場の実態を知った上で報道してもらえないかと案じます。

また国家も肥料や原油の高騰に対して支援策を用意するが、農家がとても飲めないような条件を出す。
例えば施肥(化学肥料)2割低減を支援金の要件とする。農家は消費者に喜んでもらえる品質の農産物を出荷するために現在の施肥設計をしている。
ほとんどのプロ農家は2割削減すれば収量も品質も確実に低下すると思っているはずです。好んで余剰な施肥をしているわけではない。
机上、かつ上から目線で打ち出す緊急施策、経済的に少しでも救おうという意味ではありがたいが、一方的な条件提示は農家のプライドや矜持を逆なですることもあるということも知ってほしい。

長期的な政策誘導と緊急対策は分けて考えるべきだ。今溺れかかっている人に水泳法を教えなきゃと言っても何の役にも立ちません。

何れにせよ今年の秋冬野菜市場は波乱含みです。また毎年言われる異常気象の影響も心配です。

私は園芸農家が作る国産の新鮮野菜の相場のあり方、また将来に渡る食料安保方針とも相まって、
農家の皆さんが喜んで再生産に励める価格とはどうあるべきか、また新鮮で安全な国産フレッシュ野菜の価値について、もっと広範囲な国民的議論が必要と思っています。
もし今年の冬野菜が大暴落すれば、多くの農家は2回KO負けか、粘っても5回テクニカルKO負けになるのではないかと危惧しています。