ブログ「社長のつぶやき」

2011.10.16 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

日本農業は高品質志向のみか?

先週当社は幕張メッセで開催されたAGRITEC(農業資材展)に出展しました。出展内容は弊社が勧めるトマトのココバッグ栽培システムの紹介でした。お 越しいただいた皆様には厚く御礼申し上げます。当社の狙いはココバッグ栽培システムを通じた施設トマト増収案の提案でしたが、中々そこまで来場者に伝える 事は難しいだろうということで、今回は「ココバッグ栽培システム」(ハード)の紹介に徹しようということになりました。しかし実際に展示をしてみると、増 収に結び付く環境制御技術に興味を示す専業農家が多くいました。
 帰りの新幹線でたまたま読んだWEDGEという雑誌に「なぜ農業界は増収による コスト低減を語らないのか」(昆 吉則)と言うコラムが目に留まりました。日本農業の、特に米作については、長年の減反施策によって「単位面積当たりの増 収」は目標でなくなっています。それはそうで増収はすなわち減反面積の強化につながるわけですから、自らの首を絞めるだけだからです。この傾向は野菜や果 物でも似た潮流があり、増収と言うことが主要なテーマにならないようなムードがあります。農林省の言う農業の6次産業化とはすなわち、生産物にいかに付加 価値をつけて売るかということであり、キーは高品質にあります。しかし本当にそれだけで良いでしょうか?当社が目指す施設トマト栽培は、日本の気候を利用 して少なくとも中以上の品質のトマトを、数値を根拠とした複合された環境制御技術を通して、考えられる最大の単位面積当たりの収量を目指す栽培法です。当 面の目標は10a当たり50トン採りです。前のブログで紹介したモアークさんは、単位収量当たり付加価値(表面的には価格で数値化)を普通栽培品の3倍以 上に設定しています。私はこの流れも大事だと思っています。日本農産物を戦略的な輸出品とするためにも徹底した高品質路線は重要です。この流れは優れた農 業者かモアークさんのような高い志を持った新規参入者が時代を切り開くでしょう。弊社としては高収量を目指す農業のお役にたてるよう更に努力したいと思っ ています。

2011.10.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

TPP参加問題

TPP参加問題が再熱し始めました。
野田首相は11月までに決定する必要に迫られています。

私の現段階の考えを述べさせていただくと、現況の日本農業の構造の中でTPP導入は、稲作を中心として大きな打撃を受けることはまちがいなく、反対です。
しかし日本農業の将来を考えると、農業を戦略的「輸出」商品とするためには、貿易の自由化はむしろ受け入れる必要があると思っています。

現況の日本農業は、後継者不足、高齢化と言うことで将来が危ぶまれていますが、実態としては「農地」は余っているのです。余っている農地に積極的に野菜を作付けすれば、人口減少が続く日本社会の中では、間違いなく生産過剰で暴落します。
遊休農地が増えているのは、作る人がいないからではなく、作っても採算が合わないと思っている農家が多いからです。
供給を増やすには受け皿が必要です。それは「輸出」しかありません。輸出を増やすことによって、農業大国となることができます。また、食の貢献は日本の国際的な地位を高めます。

また輸出を念頭に入れないならば、当社のマーケットも間違いなく、右下がりのままです。日本の野菜・果樹・花卉・高級畜産・及びブランド米は大きな付加価値があります。香港や中国都市部、シンガポール、ロシア、アメリカの主に「富裕層」対象とはなりますが、将来輸出とすることは十分可能と考えます。
そのためには規模拡大意欲のある農家への農地の集中と、国を挙げての付加価値戦略、そして輸出インフラの整備を整えることが大事だと思います。

稲作については、例えば保護対象を5~10ha以上栽培の専業農家に限る。中山間地や棚田等の維持管理は、環境問題と割り切って、耕作者に環境維持料を払うなり、環境NPOに依頼するとか、家庭菜園の延長線上でお米を作りたいと言う人に貸し出す等の制度を作ればよいのではないかと思っています。

今週は以上です。

2011.10.07 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

モアークの有機農業

 昨日茨木のモアークグループという農業生産企業グループを視察してきました。

 モアークグループとは、茨木県つくば市に本拠を置き、伝統農法による有機農業を中心に、生産・流通(直売)・加工を通じて高収益を実現している企業です。西村松夫代表は、カーギルジャパンを経て、一流証券会社に転職、80年代のバブル期まさにその中心にいた経歴の持ち主です。 そうした経歴と、有機農業は経済的に成り立たないと本気で思っている私は、正直「胡散臭い」「何か私にはわからない錬金術があるはず」と先入観丸出しで視察に出かけました。   しかし現地で見た西村さんの経営・理念は何十年にもわたる深い洞察と経験・労苦に裏付けられたものであることを理解しました。

①「古来培われてきた、その土地の風土に適合した農法」の帰結として「野草をたい肥化して施肥を行うことによる土作り」すなわち「草農法」に行きついたこと。しかもその草は河川の草刈りで大量に発生するゴミ(雑草)の処理を一手に引き受けるという一石二鳥の方法です。

②有機農業にもランクがある。もちろんAランク、最上級品、本物中の本物を狙う。一般農産物と比べての付加価値(具体的には単位当たり価格)を最低でも3倍以上求める。現状の平均は3.4倍とのこと。もちろんビジネスとして高収益であること。

③流通業者を通さず、価値を認めてくれるユーザーに直接売ること(ホテル・レストラン・一般消費者)、そして契約をまもること。

数えればきりがないですが、以上3点がポイントと思いました。もちろん誰もができることではありませんし、かつて世界の金融界の先端で働いたノウハウも十分生かしていると思います。しかし農林省が「農業の6次産業化」を言いだす20年近くも前に、収益の上がるアグリビジネスを計画し、実践している人がいること自体大変な驚きでした。また西村さんの人としてのとてつもなく大きな器に感じ入りました。

 私は愛知県の大園芸地帯で商いをさせていただいています。農業を知らないメディア?や学者、そしてもちろん机上の理想論を描いているだけ?の官僚が、有機農業だの、アグリビジネスは21世紀の成長産業だのと述べているのは「たわごとだ」位にしか思っていませんでした。モアークグループの理念と実践だけでは、ボリュームの問題として食糧問題の全般的解決にはならないと思いますが、信念と理念と正直を基礎として「儲かる」有機農業ビジネスが可能だということを見られただけでも本当によかったと思っています。興味ある方はモアークグループで検索してHPをご覧ください。