セピア色の写真を整理していたら、学生時代の登山を思い出した。山登りで一番楽しいのは、夏場の沢登り。なんといっても涼しいし、飽きない。尾根伝いの縦走も楽しかったが、時間を忘れるということはなかった。岩場に差し掛かった時の原則は一つ、3点確保(四肢のうち、一つだけを動かして前進する)で登ることが可能かどうかである。不可能と判断すれば、何時間かけても迂回する。
迂回はブッシュとやぶ蚊、時々蛇に阻まれ、正直嫌いです。
岩登りに入る前には必ず想像力を働かせる。今自分は命の危険を冒そうとしている。もし滑落すれば仲間に迷惑がかかるし、死んでしまうかもしれない。死んだら親が悲しむ(当時は携帯TELもない一人暮らし、沢登りに行くこと自体家族に報告していない!)。目の前の危険をしっかり認識し、滑落すれば多くの人を困らせ、悲しませることになるということを具体的に想像できるように少しだけ瞑想する。そしていざ、登攀。難所にさしかかったときには尚更、3点確保の意識と、想像力をビジュアル化するよう心がける。沢を登り切ると大抵は眺望の良い尾根に出る。その時の爽快感は格別です。また水系の源流を制覇したというのはなんだか私にはとても自己満足が得られるものでした。
3点確保の原則は経営をする上で最も大切な思想だと思っていますし、おかげさまでこの年になって、当時の思い出と今の私は繋がっていると強く感じるようになりました。しかしそれは少々保守的で、臆病すぎるかもしれません。スピードが求められる現在、上記の話には時間軸がありません。また2点確保も覚悟しないと、そもそも登れない沢もいっぱいあります。どちらかというと経営上はかつてよりも2点確保に挑んでいるような気もします。いずれにしても人工登攀や、ハングオーバーを一点確保で登るような芸当は自分には馴染まない。
が、どうしても登りたいときは2点確保も厭わない!そのような考えで進むことができたらと思っています。
川西裕康