ブログ「社長のつぶやき」

2023.06.16 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

食料・農業・農村基本法の改定は如何に

2023年6月2日東三河特に豊橋・豊川・蒲郡を中心に集中豪雨被害に見舞われたお客様・また一般の皆様に深くお見舞い申し上げます。

かなり日時も経過したわけですが、台風被害とは違い、その全貌がなかなか見えてこない。大雨による作物の水没は、ほぼ全滅ですから、台風時のようにすぐ直してくれというニーズが少ないからだろうと思います。精魂込めて作った作物が台無しになるだけでなく、壊れた機械、侵入した泥水やガラクタを片付けるだけでも気の遠くなるような作業でしょう。保険の有無や国・県・市の支援体制が整うまでは動きが取れないというのも実情でしょう。
いずれにしても被災されたお客様の立場に立って誠心誠意お手伝いできればと思っています。

さて食料・農業・農村基本法の改定が大詰めを迎えています。
農業の憲法のようなものですから大変だとは思いますが、大筋は食料安全保障の観点が一番大きいようです。国内自給率を高め、やる気のある後継者を育てるためには、より大規模化、IT化(スマート農業)を図り、生産性を高める必要がある、そして農業輸出大国になることも大きな眼目のようです。
一方で持続可能でカーボンニュートラル、有機減農薬農業の推進も掲げられています。
双方は本当に両立できる概念なのか? 現場サイドから見れば化学肥料は使わない、農薬は使わない、そして価格は下げて国際競争力を高めるというわけですから、「今の3倍働けというのか!」との農業者からの声なき声が聞こえて来ます。
私は「多様性」(Divercity)概念をもっと中心に据えるべきと考えます。定年帰農農家あり、夫婦間や老人・子どもでの兼業あり、理想と夢に燃える新規就農者あり、中山間地に自給自足的生活を求めて都会からドロップアウトする人あり、自然栽培・有機栽培に徹底してこだわる人あり。そうしたスタイルの多様性こそが将来の日本農業を強くする、というか将来起こりうる環境リスクや国際紛争にも強い国を作ることだと思っています。

食糧安保を語る際には国防力強化とは違い、様々な個性・考え方を持った農業者が経済的にも生きていける制度の構築のほうが結果として強靭な国を作ることになると考えています。また消費者も農産物ができるまでの物語を見つめなおし、自らの健康維持も含めその価値について再考願えたらと思っています。

2023.05.08 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

5月は弊社の新年度(第57期の始まり)

毎年4月は弊社の決算月、5月は新年度です。

創立後まもなくして5月1日から~4月30日が会社年度となりました。なぜこの年回りにしたのか、明確には聞いていませんが、「春種」が一段落するのが4月だったからでしょう。大手の種苗会社も5月・6月を会社年度とするところが多い。

しかし4月末はゴールデンウイークの真っ最中、なんとも締まりの悪い新年度を迎えることとなり、気勢も上がらないのですが、例年5月2日には、豊橋駅前のホテルで「経営計画発表会」を実施します。ゴールデンウイークの真ん中なので社員には迷惑でしょうが、「大安」でない限りホテル宴会場は最も空く可能性が高い日でもあるのです。

社員全員に手帳型の経営計画書を配布、同時に経営計画発表会を行うようになったのは2003年(第37期)からです。2000年㈱武蔵野小山社長の講演を聞き、是非当社でも実行したいと2001年小山さんが主催する経営塾で勉強しました。道のりは遥か遠く感じましたが、小山さんの教えで習うよりも真似ろ、コピーでも良いから早く実行しろ、間違えたと思ったら直せばよい、石の上にも3年、3年頑張れば自分のものになる、5年経てば「文化」となり、10年たてば「伝統」になると励ましてくれた。お陰様で20年経った今日は当社では多くの社員が当たり前と感じてくれる位の新年度の行事となりました。

尤も社長がそう思っているだけで今でも多くの社員にとっては迷惑かも知れないが、発表会後の新入社員歓迎懇親会を楽しみにしている社員も多い。コロナ禍で2年自粛・中止しましたが、昨年度はなんとか再開させました。久しぶりの宴会だったせいか、その後の2次会(会社は自粛せよと言ったつもりですが)で複数のコロナ陽性者を出してしまいました。当時は大量感染かと心配しましたが、その後まもなく収まり、ホッとしたことを覚えています。

今年は5月7日より新型コロナ感染症の5類への移行が決まっています。私の立場としてはポストコロナ、そして旺盛なインバウンド需要で大きな宴会や外食産業が復活し、結果として農家の懐も良くなればと心から願っています。



ちなみに第57期の社長方針(スローガン)は「農業の今を見据え、頑張る農家を応援し、未来の農業に役立つ会社を目指す」です。とにかく農業の正念場だと真剣に思っています。

2023.04.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

4月は我社にとって第2のお正月

4月は特別な月です。日本社会では「新年度」。多くの学生が社会人としての一歩を踏み出す。桜が咲き、若葉が芽吹く季節、これから始まる暑い夏を予感させる季節でもある。

弊社の決算は4月末であるが、組織変更と人事は4月が新年度。何よりも新卒社員を迎える特別な月である。
当り前と言われるかもしれませんが、大企業や上場企業と違い、学生に新卒で入ってもらえるかどうかは我々の規模の企業ではとても大切な課題、いわば試金石です。幸い弊社は50年以上の歴史があるので、リタイアする社員も毎年出る。もちろんそれ以外の理由で退社される社員もいるので、業容を維持・拡大できるのならば新卒採用が可能な企業ではある。しかしそれでも業種や風評によって新卒採用が厳しい会社や業界はいくらでもある。種苗業界、あるいは農材業界も2極分化、非常に高根の花である企業も少数あるが、多くは人財確保に非常に苦しんでいる。多くの会社では職務の分類が不明確で人に仕事がついてくる状態、別な言い方をすれば特定な人財を失えば、組織の存立基盤に穴が開くような状態なので、なかなか代替可能な人材確保はむつかしい。多くの経営者はその恐怖にさいなまれている。少なくとも会社組織の運営が「法治化」され、働き方が見える状態で、かつ会社の理念を共有してもらえるレベルまで学生に信頼されなければ、少子高齢化が進む中での新卒社員の獲得は今後ますます困難になる。経営サイド側から見ればそうした条件を満たす努力を惜しむわけにはいかないので、深刻なプレッシャーです。新卒採用の成否は企業発展の「必要条件」だとすら私は思っている。もちろん近年はそうした新卒採用絶対主義を日本特有な慣習と打破する流れもあるようですが、中小の経営者にとってはますます切実な問題となっている。

おかげさまで弊社は今年も7名の新卒社員を迎えることができた。昨年の新入社員は後輩を迎えることになるし、全社員も気持ちが新たになる。前向きな社員にとってはフレッシュな人員を迎えるということは、やりがいの向上にもつながるし、組織の未来に対して明るい気持ちになれる。昭和世代のたわごとと言われるかもしれないが、私にとっては組織運営の大切な要諦だと思っています。

2023.03.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

里山と里海の再発見

経緯は省きますが、愛知大学の印南敏秀先生から、里海に関する著書及び編書を3冊頂いた。膨大な量でしたが、真剣に読ませていただいた。中でも「里海の自然と生活Ⅱ 三河湾の海山里」は私にとっても身近な話であり、老眼に苦しみながら興味深く読ませていただいた。
「里山」という概念は結構聞く機会が多いが、「里海」という概念は恥ずかしながらほとんど初めて知った。里山とは人間の生活圏と原生的な自然の中間に位置し、自分流の解釈では人と自然が「共生」している陸地及び山(環境省の言葉では里地里山)をさす。里海とは、「人手が加わることにより生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸地域」(環境省 里海ネットより)を指すそうです。
我が故郷三河湾は、世界でも稀に見る閉鎖系水域、非常に繊細で壊れやすいが、かつては非常に生物多様性に富み、生産性の高い海だったようです(昭和30年代位まで)。三河湾はまさに世界でも稀な「里海」だったのだとハッと気づかされました。アマモに代表される藻類も、かつては肥料として採集されていたという話を聞いて、今流に言えばこれこそカーボンニュートラルの実践ではないかと合点しました。20世紀、化石燃料と化学肥料の普及は里山・里海に頼る生活から人間(農業者・漁業者)を「開放」した。労働生産性は飛躍的に伸びたでしょうが、一方で長年続いた人と自然との関係を分断し、経済合理性優先で里山・里海は破壊され続けてきた。

私の立ち位置としてはノスタルジックなことを主張する立場ではない。しかし昨今の風潮では肥料や石油をはじめとする輸入諸原料価格の高騰緩和対策と自給率向上を目指して自国生産できる資源の有効活用法が盛んに奨励されている。しかし農業現場では、「堆肥」や「汚泥肥料」の活用について正直冷ややかな声も聞かれます。机上の議論や理想論と農業現場の実態とは、かなり乖離しているように感じます。昔の生活に戻れとは言わないが、かつての「里山・里海」から現代が学ぶべきものがあるのではないか、「里海」の考え方から新たな未来技術や環境との調和、強いては政府が目指すカーボンニュートラル構想のヒントがあるのではないかと感じました。

少なくとも今後、これ以上の破壊はやめ、むしろ里山・里海の再生を前提とした国土づくりに方向転換すべきだろう。

2023.03.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

東三河で未来の夢を語る

豊橋で誇れるものはと聞くと、「市電が走っていること」と答える人は多い。よく乗りますかと聞くと大抵は黙ってしまう。自慢ではあるが、乗る人の大半は通勤通学の人と少数のマニアである。次に「農業が盛んなこと」と答える人も多いが、市電と同様、何が盛んなのか、なぜ盛んなのかと突っ込むと答えに窮する人が多い。

農業には大きく①穀物(主に稲作)②畜産(牛・豚・鶏・鶉・牛乳等)③園芸(野菜・花卉・果樹等の露地栽培及び施設栽培)の3つのジャンルがある。ジャンルごとに抱える問題はかなり違う。
その中でも園芸は担う人数も多く、生産額も多いので当地方の顕著な特徴と言えるでしょう。温暖な気候と豊富な農業用水、そして立地にも恵まれている。
しかし園芸農家に自給率向上を期待されても、そもそも野菜や花卉にはほとんどカロリーがない。また地産地消を期待されても、東三河南部(田原・豊橋・豊川の一部)の農業は輸送園芸が主流で、全国相手に如何に高値で売るかが専業農家の主な関心事である。大規模化と生産性の向上がメインの関心事ですから、有機農業や地産地消はマイナーなトピックとなりがちです。つまり何が自慢できるかは、その人の思想信条や考えによって180度異なるので、農業に期待することやその未来を語っても、話が噛み合わないことが多い。

それでも私が確信を持って信じるのは10年後・20年後も多くの国民は新鮮で高品質「安心・安全」な国産野菜を食べたいと思ってくれるだろうということです。野菜を外国に頼っても良いと思う人は少ないと思います。ならばこの恵まれた地で、10年後、20年後も農業が栄えるように少しでも役立つならこんな素晴らしいことはないと考えます。
農業が栄えるということは、それを担う農家が栄えなければ実現は難しい。10年後、20年後も担い手たる農家・農業法人の繁栄に役立つ企業でありたいと願っています。企業としての営利活動が、社会貢献にもつながると信じることができればこんなにありがたい職業はないと思っています。農業は手厚く保護されている、補助金漬けと思っている方は、是非真冬の最も冷え込んだ頃、渥美半島のキャベツ畑を見に行って下さい。厳しい天候時ほど、高値になる可能性があるので農家は畑に立って、必死に収穫作業をしています。

2023.02.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

農業現場とのギャップ

今年もはや2月 残念ながら生鮮野菜の市場価格は品目にもよるが、生産コストの値上がりに見合ったほど上がっていない。子供に後を継げとは言えないと真剣に語る専業農家が確実に増えてきた。我社にとっても死活問題です。日本農業の現場の実態と「あるべき日本農業の未来」を語る多くの声とのギャップがこんなに広がった時代はないのではないかと思う。私が言いたいのはどちらの陣営が正しいということではなく、慣行農法で生産性と品質をあげようとしている農家が、このままでは苦しいということで有機農業や自然農法に転換しても直ちには良い方向に向かわないだろうとかなりの確信を持って言えることです。農家サイドに立てば、右を向いても左を向いても苦難の道、もはや断崖絶壁のように感じているかもしれません。

昨年のウクライナ危機を契機として「食の安全保障」に対する意識は確かに高くなった。肥料の主要原産国はロシア・ベラルーシ・中国が多くのシェアを持っている。我が社も商売の主力である養液栽培向け肥料もほとんどが中国産です。肥料の供給という面から見れば中国と喧嘩するなんてとんでもないです。このところ国産肥料の有効利用や減肥の話題、有機農業への回帰が盛んに取り上げられている。食料自給率だけでなく、外国に頼らない農業原料の確保や農法の変更を呼びかけていると思いますが、「それ、我々に今やれっていうの?」と多くの農家は感じているでしょう。他にも一部の化学農薬の長期毒性も問題定義され、また弊社の主力である種の供給についても地元に根ざした伝統種苗・地域種苗に回帰すべきとの声もよく聞きます。

また遺伝子組換え食品、ゲノム編集食品の是非も議論されていますが、実態としては大豆・菜種を中心に直接・間接的にかなり日本の食卓に入っている。遺伝子組換え食品の輸入を拒否すればたちまち食料パニックになることも事実です。私にも結論はないですが、今「食」のあり方や日本農業の未来に対する議論が大きく揺れている。当の現場を担う農業者はかつてなく疲弊している。現場と思想、敢えて言えば政策には大きなギャップがある。この苦しい時期は国としてももっと現場の農業に寄り添い、かつ未来への方向性を示さないと、多くの国民が納得する国策を実現しようと思う以前に日本農業壊滅とならないかと心配しています。頑張れ日本農業、苦労が報われる方向に進んでほしいと切に願っています。

2023.01.05 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

日本農業の進路は如何に?

謹賀新年 本年もどうか宜しくお願い申し上げます。

2023年はどんな年になるでしょう。干支は「癸卯(みずのと・う)、「寒気が緩み、萌芽を促す年」となるそうです。昨年1月は長引くコロナ禍の終息が一番の関心事、また願いだったと思います。

しかし2月24日ロシアによるウクライナ侵攻を受け、歴史の流れが断絶したようなショックを受けました。国家の安全保障に対する考え方に大きな亀裂が生じたように感じています。

難しい話は私の命題ではないですが、私共の主要な関心事である農業にも大きな打撃を与え続けています。肥料を始めとする生産資材価格の高騰(農家にとっては生産費の大幅なコスト上昇)に対して、販売価格の値決めができないことの辛さが身にしみた1年だったと思います。多くの国民は食料安全保障や自給率向上の重要性を強く意識しましたが、スーパーで買う生鮮食料品は値上がりしないでほしい、これが消費者の素直な心境だろうと思います。国レベルでは自国農業の重要性を説きながら、現場レベルでは過去に記憶が無いほど疲弊した1年だったと思います。農家には発言力がないのだろうか?厳しい現実です。農業者は遠心分離機にかけられ、縮小均衡が達成されるまでじっと我慢しろと言われているような被害妄想?に駆られます。

2023年は日本農業も良い方向に向かう年にしたいですね。希望は語れますが、具体論が見いだせないのも現実です。個人的には日本農業の強みに光を当て、さらに活かす方向に舵を切ったほうが良いのではないかと思っています。例えば、お米は余っているから、作物転換を促す、あるいは畑地化を促すというよりも日本の戦略商品として活かすことに集中したらどうか。日本の気候・風土に合わない作物を育成するために多額の補助金を使うより、余るお米を世界に売る、新たな需要を喚起することにお金をかけたほうが、長期的にはメリット大ではなかろうか。かつて「貧乏人は麦を食え」と言った首相がいるようですが、深刻な食糧危機が訪れた時、「お米を食べましょう、お米は豊富にありますよ」と言えるようにしたほうが良いのではないかと思います。同様に世界に品質を認められた日本の生鮮野菜や果物を徹底的にPRしたらどうだろうか? 強みを活かすことに集中したほうが、結果として食糧生産を担う農業者を活かし、農地を活かし、結果的に食料の安全保障にとっても最善の道ではないかと考えます。今年が日本農業の転機、新たな発展局面に向かうことを切に願っています。

2022.12.10 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

下期勉強会:1年間総括

 はや師走、今年も残すところ1ヶ月を切りました。弊社では3年ぶりに下期勉強会・同忘年会を12月10日浜松のホテルで開催します。9月に最終決定したのですが、その後のコロナ禍の状況は最悪、第8波のピークと重なってしまいました。それでも従来の3倍近い面積を確保し、感染防止に出来得る限り配慮、90%以上の社員が出席予定です(さすがに忘年会は半分)。会社の経営環境も厳しいですが、期の途中で現況を確認し、方針・方向を示し、組織のベクトルを合わせ、団結を図ることは大切だと思っているからです。今年実施しないと昭和のノスタルジア文化と言われ、時代に合わないとの声も広がるのではないかと思ってもいます。

 それにしても今年はひどい年でした。毎回暗い話ばかりで、なんとか明るい話をしたいのですが、飛び込んでくるのは悪い話ばかり・・・。長引くコロナ禍で物価高がじわじわと進行する中、火に油を注ぐようにロシアのウクライナ軍事侵略が始まり、エネルギー価格・肥料価格が猛烈な値上がりと品不足に陥っています。当面はEUを中心としてエネルギー不足が話題となっていますが、来年に向けての最大の懸念は食糧不足だと思います。エネルギー資源は世界に幅広く分布していますが、肥料資源は偏在が著しい。特にリンやカリに至っては主な産出国はロシア・ベラルーシ・中国・カナダです。 先進国は高騰する肥料もなんとか入手し、作付けは可能でしょう。しかし発展途上国では、肥料自体が高すぎて買えない事態が多発する可能性がある。肥料がなければ、間違いなく収量も激減します。その上地球温暖化による旱魃や洪水、さらに中東やアフリカでの内戦(武力紛争)が激化したとするならば、世界の飢餓人口は大幅に増える。しかもそれは幼い子供やその母親が顕著になる。決して夢物語ではない可能性があります。2023年の冬以降の食料事情に注目です。

 日本においても「食料安全保障戦略」概念のもと、肥料や飼料もできる限り自給することが望ましいとされていますが、そう簡単なことではありません。弊社にも全く答えはありませんが、国が掲げる「緑の食料システム戦略」に添いながら、現場の農家にとってもメリットが有る農業のあり方、そして商品を模索しなければなりません。
これから数十年答えが見えない茨の道を歩みながら、頑張る農家に寄り添っていけたらと強く感じています。

2022.11.07 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

日本の飲食費は安い

年代による差はあると思うが、私(64歳)の年代、1970年代・80年代に青年期を過ごしたものから見ると、日本の食料価格は高い、まして飲食費はとても高いという印象が頭に残っている。

国内産のお米は国際価格と比べると5~6倍高いので、自由化すればたちまち日本の米農家は壊滅する。したがって補助金を使って保護する必要があるという論理でした。

現在日本に食用米の輸出を狙っている国が有るのだろうか?これだけ米余りが続いても、ミニマムアクセス米と称する強制輸入米を受け入れている実態をどれだけの日本人が知っているのだろうか?そもそも日本人がお米に使うお金よりもパンに使うお金が上回っている上に、うどんやパスタも大好きだ。日本人の主食は「小麦」と言っても過言はない状況が続いている。


職業柄、よく日本の自給率はなぜこんなに低いのか、食料安保上問題ではないかと質問される時がある。そんな時、もちろんジョークのつもりで「小麦食禁止令を出して、農家に好きなだけお米を作ってもらえば直ぐに日本の自給率は70%以上になる」と答えたことがある。聞く人は多分パン・うどん・パスタ禁止令を出したら、暴動が起きると思ったことでしょう。その通りです。自由民主主義を大儀に掲げる日本には絶対できない政策です。

またかつてニューヨークを一人旅した折、臆病な私はマクドナルドしか入ることができなかった。マックなら美味しいし、英語も購買ルールもわからない私でも多分買うことができる。高いか安いかは二の次でしたが、今でも日本のマックバーガーは150円、今の為替水準ではたった1ドル、先進国では日本は世界の最安値だと思います。ビッグマックも日本なら410円、本場アメリカでは5ドル以上です。

日本のラーメンの人気は世界中に広がっているようですが、日本なら7~800円、アメリカなら2000円以上が相場のようです。一般的な日本人の感覚として昼食に1000円以上出せば、贅沢、高いという印象があるが欧米では2000円以上は当たり前のようです。

原材料費のコストはあまり変わらなくとも、土地代や人件費、そしてそもそも粗利率の捉え方がかなり違うのではないだろうか?日本の外食産業は品質高く、サービス・清潔に厳しく、その上相当国際価格より安いのだから、本当に大変だというのがよくわかります。


話を戻しましょう。もはや日本のお米や生鮮食料品価格は諸外国と比べても決して割高ではない。

日本人の可処分所得が上がらない中、身近な食料品価格が値上がりするのは消費者の立場からすれば本当に痛いですが、日本は食べ物が高いという昭和時代の神話だけは一度リセットすべきと思います。

ポストコロナのインバウンド需要、期待です。世界中の人に美味しくて、安全・清潔で、そしてなによりもお値打ちな日本食を爆食してもらいましょう。

2022.10.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

今年の秋冬青果物相場はいかに?

10月に入るといよいよ秋冬産地(暖地・中間地)の出番が始まる。渥美半島でも早生キャベツや、施設のトマトも収穫が始まる。

肥料を始めとする原材料費(農家にとっては生産コスト)が大幅に上がっているので、青果物相場も上がらないと現場は相当苦しい。政府もあの手この手で物価高への防衛策を打ち出しているが、恒久的に持続できる施策ではないので、農家も喜べない。現場の実感として肥料は1.5倍、印象としては2倍近くになっているという声も聞く。

かなり前から航空業界では燃料サーチャージ制度が導入されている。正直生鮮農産物や一部畜産・酪農などもサーチャージ制度導入すべきではないかと思う。過去5年位の平均相場を出し、そこから生産コスト上昇分(多分1割から2割)をかけた額を下回る相場が続く場合はサーチャージを掛けるというのはどうだろうか? 経済統制色が強まり、本来の競争力が低下するという意見もあるでしょうが、それならなぜ航空業界ではあっさり認められたのだろうか? 航空業界の競争は過酷との声も聞くが、農業界でも産地間競争が結構過酷であることは意外と知られていない。迫りくる食糧危機への対処と言うと聞こえは良いが、今目の前にある危機は生産過剰による価格暴落リスクです。

一方政府としては、金融緩和継続とセットでなんとしてもコストプッシュ型のインフレを抑えたい思惑がある。特に国民・消費者は日用必需品である食料品価格の動向には敏感、できれば上げたくないのが本音だろう。生産者側の経済状況、そして可処分所得が低下し続ける消費者側の経済状況の板挟みで非常に難しい選択を迫られる可能性が高い。

「スマート農業への転換」「緑の食料システム戦略」等の政策理念は私共も真剣に考え、商売の中に反映させたいと思うが、今年の冬にわかに大転換できるわけではないし、ある日突然生産性が急上昇するわけでもなく、大幅なコストダウンが可能となる有機肥料が現れるわけでもない。それ故に秋冬相場の動向はかつてない関心事である。来年以降に向け明るい展望が見えなければ、今度こそ「離農」を真剣に考える農家が増えるのではないかと心配している。もちろん弊社のビジネスにとっても大打撃です。そんな想いもあり、今年の社長スローガンは「頑張る農家が頼るNO1応援団を目指す!」と決めた。とにかくこれからが本当の正念場です。